指宿のキス(1)

2015年8月15日 小潮 晴れ


とある朝、九州での職場着くと、上司に会議室に呼び出された。

なんだなんだ、と思いながら椅子に着くと

「谷田くんさ、宇宙好き?」

と唐突に切り出された。

「好きか嫌いかでいうと好きです」

「そうか、じゃ、一緒に電話するの付き合って」


なんでも、一ヶ月後に種子島からロケットが打ち上がるらしく、種子島に渡るフェリーは電話による争奪戦を勝ち抜いてチケットを取らなければいけないんだとか。

戦うこと10分、ようやく電話がつながり無事チケットをゲット。


〜 一ヶ月後 〜 


出発の金曜日の夜、悲しいニュースが飛び込んで来た。ロケットの打ち上げが延期になるらしい。

とはいえ、週明けの有休まで決め込んだメンバー(内2名は釣具満載)が集結済み。


「とりあえず鹿児島まで行って考えましょう」

「お前ら釣りがしたいだけだろう?」


種子島に渡る意味を見出せないまま、一向は鹿児島に向けて高速を南へひた走った。

翌朝

「種子島に渡っても意味がないなら仕方ない、桜島に渡りましょう」

「お前ら、釣りがしたいだけだろう?」


実はこのときの桜島は数十年に一度の危機的状況で、特別警報のサイレンも鳴ったりしてちょっと恐ろしかった。

釣り公園のおじさんの「噴火しても山のあっち側だよ、自己責任やけどね」の言葉に乗っかって1日釣りに興じた。


〜続く〜

指宿のキス(2)


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ビール片手に日常と物語の隙間を歌う釣り人

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